木全賢(きまたけん)ー工業デザイナー/元シャープデザイナー(JMAM)
○なぜ黄金比(1:1.618・・約5:8)は美しいか?
黄金長方形の短辺を一辺とした正方形に分割すると残された長方形は再び黄金比になり続ける。その図は「対数螺旋」と一致する。対数螺旋とは渦巻き星雲、台風、向日葵の種配列、オウムガイや巻貝の成長曲線など自然界のいたるところに存在する。
つまり自然とともに生きてきた人間にとって、成長してゆく有機物の自己相似的な形(黄金長方形)に根源的な美しさを感じるのである。
黄金比に次いで美しいとされる白銀比(1:1,4142、約5:7)は用紙サイズ規格の2分割しても必ず同じ比率になる形で黄金比と同じく自己相似性がある。規則性と安定感のある使いやすい形である。ちなみにA0判の大きさは1㎡、B0判は1.5㎡。
つまり、5:7〜8という縦長の長方形は美しいと感じるようである。
○デザインの神様は細部に宿る
○美的・ユーティビリティ効果
人間の感性として、性能とは関係ないところで、デザインの美しいものの方が使いやすいと感じる。美しいデザインは第一印象でポジティブな反応を起こすため、少しくらい使いにくくても使用頻度が増え、愛着を持って長く使ってもらえる。あまり美しないデザインは、第一印象でネガティブな反応を起こすため、思い入れも少なく付き合いも疎遠になり、結果的に小さな欠点をことさらあげつらうようになる。
※美しいデザインは長持ちする つまりデザインによるエコ効果!
○人間工学デザインの法則
・ヒックの法則ー1952年「情報の増加率」WEヒック
決断に要する時間はとりうる選択肢の数と選択肢の数との相関関係にある。緊急時に対応する選択肢は少ない方がよい。GUIに用いられる手法。
・フィッツの法則ー1950年代 ポールMフィッツ
目標にたどり着くまでの時間は、目標の大きさと目標までの距離によって決まる。緊急停止ボタンなどは、やや離れた位置で大きく表示した方がよい。
・チャンキングーかたまりとしての利用
人は情報をかたまり(チャンク)にして記憶する傾向を利用し、リモコンの機能別にかたまりを持つレイアウトや普段使わない機能を隠す方法。
・マジックナンバー2001年ネルソンカウアン
人が短期に記憶できるチャンク(固まり)の限度は4±1である。
電話機は3x4、電卓は4x4、ゲーム機○△□×とABXYなど4つ以内のキーによる組み合わせで成り立っている。
・グーテンベルグダイヤグラムー横書き文化の西洋においては人の視線が左上から右下へ読み進む観衆を利用したレイアウト。左上にスイッチやシンボルマークを入れたりする。
○認知科学を利用したデザイン
・可視性とアフォーダンス
アフォーダンスとはモノをどのように使うことができるかを決定する形や素材などのもっとも基礎的な特徴。縦に引くのか前に押すのかはデザインで導くことができる。
○ユニバーサルデザインの7原則
・どんな人でも公平に使えること(Equitable use)
・使う上で自由度が高いこと(Flexibility in use)
・使い方が簡単ですぐにわかること(Simple and Intuitive)
・必要な情報がすぐにわかること(Perceptible Information)
・うっかりミスが危険につながらないこと(Tolerance for error)
・身体への負担(弱い力でも使えること)(Low physical effort)
・接近や利用するための十分な大きさと空間を確保すること(Size and space for approach and use)
○KISSの法則(Keep it simple,stupid-ばかみたいにシンプルに)
「最大の売り」「操作性」「基本機能」「基本形態」など商品開発における要は1つ
○キーワードの抽出
実物がないのに全ての人に共通で認識できるものは「キーワード」
スティーブジョブスはimacの開発で「宇宙にえくぼを作ろう」をキーワードに開発を行った
○デザイナーが使う様々なスケッチ
①イメージスケッチ ②アイデアスケッチ ③レンダリング ④サムネイル
⑤シーンスケッチ ⑥コンセプトスケッチ ⑦フルサイズスケッチ
⑧バリエーションスケッチ ⑨ハイライトレンダリング
○モックアップの効果ーモックアップはプレゼンテーションの「華」である
①百スケッチは一モックアップにしかず
②作るためにかけた労力や時間という努力により人の心を掴むことができる